句会の心得 −楽しい俳句ライフのために− 第三回 句会のいろいろ【佐藤文香さん】




○句会の二次会に参加する

前回の記事「初めての句会」では、句会に参加する際の注意点についてお話ししましたが、句会によっては、その後に二次会(懇親会)がセッティングされている場合があります。

 

ほとんどの場合、二次会への参加は任意です。よって、事情があってもなくても、参加したいと思わなければ行かなくてかまいません。気が進まないけれど断りにくいと思う人は「明日の朝が早いんで」など、適当な理由を言って帰りましょう。

その上で、二次会に行くメリットと注意点を挙げておきます。

 

・二次会に行くメリット

句会中は句会に出てくる俳句のことしか話せませんし、ほとんど主宰の話を聞くだけ、という場合もあるようですが、句会後は参加メンバーや主宰と幅広く話をすることができます。なんと言っても、句会で疑問に感じたことを主宰や先輩に質問したり、時間がなくてコメントできなかった句の作者に感想を伝えたりできるのが、二次会のいいところです。とくに初心者の方は、自分の無点句がなぜ選ばれなかったのか聞いてみると、勉強になると思います。

たまたま好きな俳人が同じという人とその俳人のよさを語り合うことができたり、句会によっては「昔、田中裕明と句会をしたときはね」といったような、物故俳人の人となりについて聞けたりすることもあるでしょう。指示語や助詞についてなど、具体的な技法について意見を交わすことは、次の句会全体のレベルアップにもつながります。こういった会話は、句会でたまたま点が入ること以上に価値があることと言えます。

俳句以外の話で盛り上がる場合もあります。私の場合、いいレストランの情報を仕入れられたとか、恋や仕事の悩みを聞いてもらえてありがたかったということがありました。句会に来る方の普段のお仕事や人生経験はさまざまですから、「じゃあ今度はSさんに薔薇について教えてもらおう」「次の仕事のイラストレーションをお願いできますか?」「今度の Tさんのライブ行きますね!」というように、俳句を超えた付き合いが生まれ、俳句だけではなく生活が、人生が豊かになるということも起こり得ます。

 

・二次会に行く注意点

句会では話せなかった人と話せて、わからなかった人柄がわかる、というのは、いいこともあればそうでないこともあります。お互い人間なので、ちょっと話が合わないかも……という相手は、必ずいるからです。それだけならまだいいですが、未婚だとわかると知り合いとの結婚を勧めてくる人や、連絡先を教えると執拗に連絡してくる人もいます。相手に悪気がない場合も多く、句会自体には参加したいとなると、対応が難しい。なので、初めての句会の場合は誰かと急速に接近しないようにし(とくに若い女性は気をつけてください)、もしそういうことがあれば、早い段階で別の方に助けを求めるようにしてください。

また、お酒の席となることが多いため、飲めない人で、酔った人と話すのが苦手だと厳しいかもしれません。少し飲めても弱いという人は、自分の許容範囲を超えないよう、お酌を断ることも大事です。お酒を飲んでいなくても、会計が割り勘という可能性も高いですから、飲めない分たくさん食べるなど、「損をした」と感じないよう工夫してください。

○吟行や合宿に参加する

句会のメンバーと仲良くなって、みんなでどこかへ行って俳句をつくる(吟行といいます)、さらに泊りがけで旅行するといった計画が持ち上がることもあるかもしれません。

メンバーの中に苦手な人さえいなければ、日帰りの吟行には気軽に参加してみましょう。多くの場合吟行の後に句会があり、歩きながらその句会に出す句をつくらなければならないため、即吟が苦手な人は躊躇してしまうかもしれませんが、いつもより注意深くまわりを観察して句材を得ることにこそ吟行の意義があり、作品は帰宅してからいくらでも推敲できるので、あまり句会段階での句の出来を気にしすぎないようにしましょう。歩きながらほかの参加者と話すのも楽しいですが、話に夢中になってしまうと俳句がつくれないので、無駄に話しかけてくる人からは逃げてください。

泊りがけの合宿は、月1回いつも句会で顔を合わせる気の知れた仲間と行きましょう。すでにコミュニティができあがっている句会に新入りとして参加し、すぐに合宿に誘われた場合は、いったん返事を保留にしてよく考え、迷う場合は信頼できる人に懸念していることをいろいろ相談してからがいいと思います。苦手な人がいる場合は、その旅行には参加してはいけません。義理よりも身を守る方が大切です。

○勉強会、俳句イベントに参加する

普段参加している句会以外の、オープンな勉強会やイベントに参加してみるのもおすすめです。現代俳句協会青年部の句会や勉強会、句集出版記念のトークイベントなど、ツイッターで何人か俳人をフォローしていると、いろいろな情報が流れてくるようになります。興味があるイベントを見つけて、思い切って参加してみましょう。その際、中心に扱う書籍があらかじめわかっているようなら、入手して一通り読んでおくと、より楽しめると思います(販売促進イベントの場合、イベント当日購入することも喜ばれます)。もしかすると、自分には難しかった、合わなかった、ということもあるかもしれませんが、1人で俳句を読んだり書いたりしているとどうしても自分の好きなものだけに偏りがちになることを考えれば、異質なものに触れることもまた、句作力の向上につながるとポジティブに考えましょう。なお、イベントの打ち上げに行くかどうかについては、句会の二次会と同じように考え判断してください。

○インターネット句会に参加する

メール句会やネット句会は、遠くに住んでいる人など、リアル句会に参加しにくい事情がある人にとって大変ありがたいシステムです。知らない相手とでもフラットな関係性で楽しめるというのもいいですね。私が高校・大学生のころは、ネット上の鍵付きの掲示板をつかって毎週10句ずつ出し合うなど、リアル句会以外での鍛錬の場として、インターネットを活用していました。現在は夏雲システムというシステムもあり、誰でも簡単にインターネット句会を始められるようになりました。

オンラインでの句会で気をつけることは、相手の顔が見えない分、選評の際慎重に言葉を選ぶことです。たとえ知り合い同士であっても、雑なコメントで相手を不用意に傷つけることのないよう、あるいは高圧的にならないようにしてください。誰でも参加できる句会のスリリングさもよいですが、真面目に安心してやりたければ、ある程度信頼関係を構築できている間柄での句会運営をおすすめします。

また、これは俳句だけの話ではありませんが、オンラインでいい人だからといって、会っても好きなタイプとは限りません。はじめてリアルで会うときは1対1にならないよう心がけてください。

 

おまけ*句会でのメモのコツ(20名程度以内・各自披講・点盛の句会の場合)

名前のメモの仕方(20名程度以内・各自披講・点盛の句会の場合)

句会が始まる前に、まず参加者の席の配置を書いておきます(ロの字型かコの字型の場合が多いです)。披講が始まったら、選ぶ人の名前を聞き漏らさないようにします。披講する人はまず「●●選」と名前を言うので、書いておいた座席配置のところにその人の名前を書き入れます。これをしておくと、点盛の際に慌てて「今の誰でしたっけ」と隣の人に聞かなくてすみますし、人と名前が一致しやすくなります。

 

予選のメモの仕方(清記用紙をまわす(コピーしない)句会の場合)

清記用紙には必ず番号が振ってあります。句を控える際、番号も一緒に控えるようにしましょう。

書くのが速ければ全部書き写すのも手ですが、自分のところに清記用紙が溜まってしまうと、全体の選句の進行が滞ります。よって、選ぶ可能性の低いものは飛ばして写していくことが必要になりますが、飛ばした句があとから話題になることもあります。そこで、各清記用紙のなかから「これは」と思う句を控えたあと1行か2行空けておく(余裕があれば選ばない句も上五だけ書いておく)と、あとから話題になったときにメモしやすいのでおすすめです。ついでに自分の句も上五だけ書いておくと、誰の票が入ったかをメモしやすくなります。

 

発言のメモの仕方

予選用紙(もしくはご自身のノート)の、該当句の横に書き込むことが多いと思います。なので、予選はゆったりめに空白を設けておくといいですね(上記、1〜2行空けておくことで対応できることも多いです)。コピーしてもらった清記用紙だと、メモの場所が少ないという場合は、別でノートか紙を用意して、該当句(●番「秋風や〜」など上五のみ)とともに、発言をメモしておくといいと思います。

ちなみに、私の句会に来ている人でいえば、たくさんメモをしている人は上達が速い傾向にあるように思います。何のために句会に来るかにもよりますが、もし今よりいい俳句が書きたいという意識があれば、他者の選評を漫然と聞き流すのではなく、書き留めておきましょう。

 

 

次回は、句会を自ら開催する際の注意点です。

 

句会の心得 −楽しい俳句ライフのために−

 

プロフィール
佐藤文香 さとう・あやか
1985年兵庫県神戸市生まれ。中学一年生のとき、夏井いつき氏の俳句の授業で俳句にハマり、以来いろいろな俳句の賞に応募してきた。
第二回芝不器男俳句新人賞対馬康子奨励賞、第十回宗左近俳句大賞、第一回円錐新鋭作品賞白桃賞(http://ooburoshiki.com/haikuensui/2017/04/29/ayaka_sato_73/)。句集『海藻標本』、『君に目があり見開かれ』。詩集『新しい音楽をおしえて』、掌編小説集『そんなことよりキスだった』。編著『俳句を遊べ!』、『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』など。

公式サイト:television – 佐藤文香 official web site